2016/9/3 関東ウェーブの会第5回例会記録

《はじめに》

今回の第5回例会は懇談会,懇親会を通して,スタッフを含め全体で18名の方々が参加してくださいました。今回は,初参加の方が2名いらっしゃいました。また,ここ数回続けて参加してくださる方も多く見え,毎回参加してくださっている方には運営を手伝ってくださいました。懇談会では,躁うつの波にどのような心持ちで向き合って対処しているかについて,皆さんの意見をお聴きしました。また,病識を持つのに役立った書籍の紹介を行いました。このような形式での本の紹介は,10年続く関東ウェーブの会で初めて取り上げたものでしたが,皆さんからさまざまな本を紹介していただき,とても盛り上がった印象を受けました。第3部では,来年度からの会員制化について,今までの話し合いの流れを確認すると共に,皆さんから質問や意見をいただくことができました。会員制に向けて,有意義な話し合いを進めることができたと思います。懇親会では,懇談会で取り扱いきれなかった薬の話について扱うことができました。

以下は当日のスケジュールと,懇談会で話し合ったことの要約です。参加された方々には是非例会を振り返っていただき ,今後に役立てていただければ幸いです。参加されなかった方々にも,この記録がウェーブに興味を持っていただくきっかけになればと思います。

 

《スケジュール》

(1)自己紹介

(2)懇談会第1【躁うつを持ちながらどのような心持ちで生活するか】(参加者からの話題)14:4015:20

(3)懇談会第2【病識を持つのに役立った本の紹介】(参加者からの話題)15:3016:10

(4)懇談会第32017年度からの会員制について】 16:2017:00

懇親会終了 17:00

休憩・買い出し等50

(5)懇親会

《懇談会の要約》

懇談会第1

【躁うつを持ちながらどのような心持ちで生活するか】

@)気持が高ぶったときにどのように気持を穏やかにするか,皆の意見を聞きたい。

A)躁うつ病は感情の波を抑えなければならないと言われるため,気持を高ぶったときもそのような自分を抑えてしまいがちである。そのような中で皆は何を楽しんで生きているのか,聞きたい。

〔皆の意見〕

@)自分はハイテンションにならないように気をつけている。車の中やバイクで叫んで発散する。

A)これは自分も難しいと思っている。

@)ストレスのかかることをしないようにしている。仕事を家に持ち込んでしまうと,眠れなくなる

こともあるので,仕事は家に持ちこまないように気をつけている。

A)外に出ていろいろなものを見て,「美しい」や「楽しい」を味わっている。

@)ハイテンションを抑えるには,薬で抗不安剤を使用するようにしている。

A)達成感のあることを行う。ゲーム(ポケモン)等を行い,達成感を味わう。

@)薬に頼っている。今出されている薬が抑える薬なので,あまり上がることがない。

A)なるべく外に出るようにしている。家の周りには小学校や保育園があるのでそこを周回して,子

どもの声を聴いたり桜を見たり,プールを見て泳ぐことを想像したりして気持を上げている。

@)仕事と家でくつろぐ間にワンクッションおくために,「中間点」を作るということを心がけている。

自分は例えばサンマルクやベローチェで一人音楽を聴き,静かな時間を過ごすようにしている。

@)ハイテンションの時は,薬に頼っている。音楽を聴くとそれ自体が刺激になってしまうので,デ

ィスコミュージックなどは聞かないようにする。また,「宇宙の始まりはどこだろう,自分はちっぽけなものだ」などと考えるなどして自分を慰めている。

A)今まで,基準になっている精神状態が「躁のときの気持ちよい状態」だったので,それはダメなことだ,と自分に言い聞かせ,諦めている。今はジムに行って鍛える・資格の勉強を行うなど,今目の前の楽しみだけでなく,将来につながるような楽しみ方をしている。自助会で同じ病気の人と話すことも楽しみにしている。今まではクラブなども好きであったが,今は行かないようにしている。

・(話題提案者)今までの話の中では,「会社から自宅までにワンクッション置く」という話がガツンと

きた。また,薬の調整についても考えていかねばならないと考えた。

@)自分は基本的にハイテンションにはならない。軽躁を見極めねばならないことは分かっているの

で,次回,軽躁がきたとしたら見極められるだろう。

A)寛解に持っていけば普通の人と同じように楽しめるのではないかと考える。

@)自分のストレス源にはなるべく近づかないようにしている。近づかねばならないときは,距離を

おきながら接するようにする。ストレス源を知るためには認知行動療法が役だった。

A)やらかさなければ,軽躁が良いと思っている。ストレスの発散には,病気仲間や友達と会って話

とする,愚痴る,ということが有効なので,定期的に行っている。

@)統合失調性感情障害のころ,3回脱臼をしたが,それに気が付かなかった。その後手術をしてやっ

と歩けるようになり,ようやく普通の生活ができるようになった。気をつけていることは,睡眠をよく取ること。今は,日常生活の最低限のことをしっかりやることを意識している。

・(ご家族の方より)主人も,薬のせいもあって人生を楽しめなくてつまらないと思っているらしく,それが自分にも波及してしまっている。その中でも,子どもの存在には癒やされているようである。

@A)自分は聴覚と嗅覚に頼るようにしている。気分を沈めるためにも,上げるためにも,音楽は有効であると思う。「(例えば)うつのときはアフリカ音楽などを」というように,自分の感覚によっての音楽を用意しておくとよい。嗅覚に関しては,「嗅覚がだめになるとうつになる」という研究があるほどに,精神に影響を与えるものなので,気にはしている。

・(司会)できることなら眠る,というのは大切なことであろう。また,意識を自分自身から転換するこ

とも有効であろう。また,躁状態の楽しさをベースにするという考え方を切り替えることは必要であると思う。

懇談会第2

【病識を持つのに役立った本の紹介】

・(司会)10年近く会を行っているが,このような形式で本を紹介するのは初めてなので,スタッフとし

ても興味深い。

《紹介された本と,その感想》

著者(訳者・編者・監修者)(出版年),タイトル 出版元 の順で記載。

ケイ・ジャミソン 田中恵子(訳)(1998),躁うつ病を生きる 新躍社

ケイ・ジャミソンという,心理士で躁うつを持つ女性の自伝。波乱万丈な人生を描いた本。

モニカ・ラミレツ・バスコ 野村総一朗(監修)(2007),バイポーラーワークブック 星和書店

認知行動についての本。アメリカのものを訳してある本であるが,訳のせいか少し読みにくいと感

じた。

うつ病リワーク研究会(編)(2011),うつ病リワークプログラムの続け方 南山堂,pp12-27

職場復帰するためにリワークに通ったことがあるが,最近は様々な場所でうつと躁うつに対するリ

ワークが行われている。リワークに関する説明や注意点について書かれている。

加藤忠史(編)(2012),躁うつ病はここまで分かった第2版 日本評論社

薬について詳しく述べられていたので知識がついた。

内海健(2013),双極U型障害という病 勉誠出版

病前性格についてや,対人過敏症に気がつくことが治療の第一歩ということが書いてある。

「うつ病新時代」という同著者の本もあり,こちらも参考になる。

貝谷久宜(2014),よくわかる双極性障害(躁うつ病) 主婦の友社

電気けいれん療法を受けたこともあるが,そのようなことについても書いてあった。

書き方が易しく,読みやすかった。うつでも,イラストなどがありわかりやすく読める。友達や親に説明するのにもよいだろう。

鈴木映二(編著)(2015),ノーチラスな人々 日本評論社

ラミクタールの血中濃度のことや,躁うつ病,統合失調症,うつ病などの分類の仕方についての考え方なども書いてあった。

有田秀穂(監修)(2016),幸せになる!心に効く処方箋 宝島社

セロトニンとオキシトシンをどのように出すかについて書いてある。うつを底上げするための手法

が書いてあった。

北杜夫・斉藤由香(2014),パパは楽しい躁うつ病 新潮社

エレン・フランク 阿部又一郎(監訳)(2016),双極性障害の対人関係社会リズム療法 臨床家とクライアントの為の実践ガイド 星和書店

対人関係社会リズム療法についての本。水島広子先生もこの療法について書いていて,そちらの本

のほうが有名かもしれない。

加藤忠史(2009),双極性障害躁うつ病への対処と治療 筑摩書房

●Brain PQuinn 大野裕(監訳)(2003),「うつ」と「躁」の教科書 紀伊國屋書店

アメリカのクリニカル・ソーシャルワーカーの方が書かれた本。物質乱用について割かれている部

分が多く,自分はアルコール依存症なので訳に立った。

加藤伸輔(2016)双極性障害(躁うつ病)と共に生きる 病と上手に付き合い,幸せで楽しい人生をおくるコツ 星和書店

客観的に自分自身を捉えられていて,当事者本として一読の価値があるだろう。気分を保つために

は睡眠が大切だと強調されている。

藤臣柊子(2013),躁鬱(そううつ)なんです,私。 ポプラ社

漫画家で躁うつの方の本。漫画なので読みやすい。認知行動療法の大野先生との対談も入っている。

貝谷久宜(2013),セレクトBOOKS こころの薬BOOKS 両極端な気分の変動をコントロールする よ

くわかる双極性障害(躁うつ病) 図書印刷

北嶋一郎(2012),生きぞこない エリートビジネスマンの「どん底」からの脱出記 ポプラ社

未読だが興味がある。

文月ふう(2013),ママは躁鬱病んでもって娘は統合失調症 星和書店

入院中に読んだ。苦しんでいるのは自分だけではないと知って救われた。

●Monica Ramiriez Basco(2006),thebipolarworkbook-ToolsforControllingYourMoodSwings. The

Guilford Press

バイポーラーワークブックの原著。自分としては,躁鬱病の特色があまり捉えられていないと感じた。

また,「精神力を持ってストップをかけよう」,というような精神論があった。しかし,病識を持つためには役立ったと感じている。

たなかみる(2004),マンガ お手軽躁うつ病講座High&Low 星和書店

漫画家で躁うつ病,ACなどがある方が描いた漫画。わかりやすく,続編の本では様々な症状がよく描かれていて勉強になった。・当事者の様々な体験を聴いたりそれについての意見交換を行ったりする場に行き,実際に同病者同士で話すことが,最も病識を持つのによかったと思っている。関東ウェーブの会も,オフ会や例会の記録を見やすくまとめ,アーカイブ形式で皆が読めるようにしていければ,とも考えている。

 

懇談会第3

2017年度からの会員制について】

〔スタッフより,概要説明〕

(司会)なぜ今この話を行うかということについて。この間,半年以上かけて,来年度から会員制にするということに向けての話合いを行ってきた。だいぶまとまってきてはいるが,4月から会員制にするためには3月に総会を開く必要性があり,それまでに会員が集まっていなければならないという時期的な問題がある。そのためには,12月までに会員制についての最終決定を成さねばならず,12月の運営交流会で最終決定を行うことが必要である。

〔確認事項〕

・会員制になったからと言って,だれもが参加できる会に制限がかかるわけではない。全ての躁うつ病

者に開かれた会という形態は維持する。

・会の運営主体をスタッフにおくのではなく,会員そのものにおくことにして行く。運営の主体が個人

にあると,個人のパーソナリティで会が成り立ってしまうことになってしまう。

・運営する人・何かを受け取って帰る人,という形態ではなく,皆が運営に参加していくという形態を

作らねばならない。

《意見・疑問点》

・会員が意見をできるのは総会の場だけか?

最終的な決定は,総会で行うということである。総会に来られない人は,電話やメールなどで伺う

ことも可能である。

・掲示板で意見を募ることも考えてみればよいのではないか。

・「会員制にすると気軽に参加できる現在の形が失われるのでは」,という疑問に関しては,どのような意見が上がったのか。

会員の人も非会員の人も,問題なく参加することはできる。

・会計について,どのように会費を集めるか。

会費は年間1,200円を予定している。細かい理由については,第3回運営交流会のレジュメを参照してほしい。また,会費を集める時期については年度始めと考えているが,途中からの会員への参加については検討中である。・現状ではスタッフに負担がかかりすぎているから,会員制に移行していくということでよいのか。

たしかに負担はあるが,今回の会員制は,「参加者が会の主体となる」ということがメインである。

・会員数はどれ位をみこんでいるのか。どのように募っていくのか。最初はだいたい20名〜30名ほどだと思っている。募り方は,ウェブ・今までのメーリングリスト等

を考えている。

・すべての躁うつ病者に開かれている会,という記述があるが,それはそうとう難しいことだと経験的

に思っているが,どうするのか。例えば遠距離の方は同じような機会がもてない。また,スタッフのあり方について,スタッフがどの程度いれば運営が能率的に行われると考えているか。

遠距離の方の問題などについては,客観的にどうしようもない問題でもあるので,時間をかけて話合い合意を得ていきたい。スタッフについては,今は10名ほどいるが,現状は3名で動いている。仕事や様々な事情でスタッフも動けない人が多い。仕事を切り分けていくことについては,いきなりは難しいので少しずつ,になると思う。すべての躁うつ病者に開かれた会,という理念については,今まで躁うつ病者が集まると潰れてしまう会が多かったなかで,関東ウェーブができたときにこのような理念を作っていった歴史がある。排除しようと思えば誰でも排除ができるので,このような理念がなければ会は存続しないと考えている。

・運営が固くなることなどを懸念している。自分も会を行っていたが,やはりスタッフが少なくなって

しまい,スタッフの確保に苦労していた。今は,できる範囲で支援をしていきたいと思っている。

・会員制にするとどういう意味で当事者のために良くなっていくのか。

会員制にしないと,総会が開くことができず,皆で運営することが難しくなる。また,願いとして

は,会員が自分のことだけではなく,皆が皆のことを考えて運営できることである。

・(スタッフ)スタッフは,何か特別なスキルを要求しているのではなく,月に2回の会議(スカイプ)に出席できることが大切であり,条件でもある。今までは,スタッフの中で,何かの問題に対してスタッフがどのように考えるべきかを話し合ってきた。このような話合いが重要な活動であり,月2回,1 2時間程度スカイプで話し合っている。しかし,この条件が難しくてスタッフを休職する人が多い。今,スタッフ会議へのオブザーバー参加,ということを行っているので,どのような会議が成されているか知りたい方はどんどん参加してほしい。

オブザーバー参加という名称ではあるが,意見を言うことは可能であるし,それによった決定もで

きる。

・(幹事)自分は家族の事情で休職しているが,今のスタッフの状況は危機的な状況であるので自分も会議に参加しようと思う。どのような経緯でこの「会員制」という話が出ているかについても,スタッフ会議に出ることでよく分かるのではないか。会員制ということで抵抗感がある方もいると思うが,軌道に乗れば,順調に総会に向けて動くことができると思う。

20173月までの会の進め方について】

@12月に運営交流会を行う(例会の中で)。このときに,会員制の方針の最終決定を行うとともに,会則の検討・重要事項の検討を行う。

A12月の運営交流会移行,会員を募る。 B)来年の3月の例会を会員総会とする。《おわりに》

今回は,例会という形態をとってから5回目の会でした。ここ数回,続けて参加してくださっている方がだんだんと増えてきていて,ディスカッションも活発になっているように感じます。また,来年度からの会員制化についての話し合いに関しても,皆さんの疑問や意見をお聴きすることができ,着実に話し合いが進んでいることが実感できました。個人的な感想ですが,今回は「本の紹介」という話題が新鮮だったように感じます。もちろん,ウェーブの場で,当事者同士が集まり交流することは有意義ですが,書籍から学べることも多くあり,それらを共有できたことは有意義だったと思います。

参加してくださった皆様,本当にありがとうございました。これからも関東ウェーブの会をよろしくお願い致します。

《関東ウェーブの会からの 2017 年度以降運営に関する重要なお知らせ》

トップページの「関東ウェーブの会からの重要なお知らせ」にもあるように,ウェーブ は 2017

度から会員制・毎月の例会制に移行していきます。つきましては,これから 2017 年間度までに,ウェーブは毎回の例会の中で,会の運営について皆さんと話し合っていく時間を設けたいと考えています。もちろん,躁うつ病同士が気兼ねなく自分たちのことを話あい交流できる場としての機能も,十分に果たしていきます。

次回定例会のお知らせ

次回は 2016 10 1日(土),次々回は 11 12日(土)に例会を予定しています。詳しくは後日「躁うつ掲示板」に UP 致します。ご参加お待ちしております。お手数ですが, 参加の際には参加表明をしていただけると非常に助かります。

以上